令和6年6月定例会(6月27日)
■ 医療・介護分野の業務効率化につながるDXの推進について
少子高齢化と人口減少が進行し、医療と介護の需要も今後更なる増加が見込まれる中、現場で働く人たちの確保は今後ますます困難となることが想定されており、医療と介護の現場における業務の効率化が急務となっている。国では、令和5年6月に医療DXにスピード感をもって取り組むための工程表が示されたが、全国医療情報プラットフォームの創設や、電子カルテ情報の標準化など、大規模な仕組みづくりを進めることが主なものとなっている。例えば在宅の高齢者の血圧や脈拍などを、スマートウォッチなどで測定し、送信することで、家を直接訪問しなくても把握や管理ができるようになるなど、ICT機器の進化は着実に進んでおり、医療や看護・介護の現場では業務の効率化に向けて導入が検討されている。しかしながら、どんなに良い施策を講じても、小規模な事業所からは、機器の導入経費が捻出できず、業務のICT化を進めるための人材がいないため、取り組んでいる余裕がないといった声が聞かれる。今後、医療・介護分野におけるDXを推進するためには、個々の医療機関や介護事業所等がどのように取り組んでいくかが重要となる。そこで、県の医療・介護分野におけるDXの取組の現状と、今後の取組について伺う。
本県では、県・市町と医療・介護関係者が一体となって、多くの職種で患者情報等を共有する静岡県地域包括ケア情報システム「シズケア*かけはし」により医療・介護連携を図っている。また、診療情報等を医療機関同士で共有する「ふじのくに ねっと」による病診連携に取り組み、医療やケアの質を向上させながら業務の効率化を推進している。個々の医療機関及び介護事業所に対しては、新設の訪問看護ステーションが整備するICT機器や、介護施設で見守りを行う介護ロボットなどの導入に対して助成を行っており、その際、機器等の活用に関する相談対応に加え、ICTリテラシーの専門家の派遣に対しても支援をしている。
今後は、国の医療DXの工程表に基づき、国の支援制度を活用し、医療関係団体等の意見を聞きながら、電子処方箋の普及や電子カルテ情報の共有などを進め、今年度の介護報酬改定においても、テクノロジーの活用による継続的な業務改善が評価されることとなったことから、介護事業所の要望をしっかりと聞き取り、ICT機器の導入が更に進むよう支援していく。
■ 最近の消費者被害の傾向と被害防止対策について
最近の消費者を取り巻く状況を見ると、物価高騰が続き、現在の収入や貯蓄だけでは生活に不安を感じる方が多く、投資などに関する社会的関心が高まっている。また、新型コロナ対策として非接触での取引が推奨され、インターネット通販やキャッシュレス決済などが、人々の生活の中に定着した。一方で、昨年5月に感染法上の位置づけが5類に移行し、対面による取引も活発となってきている。そのような中、SNSを通じて知り合った人から投資の勧誘を受け、お金をだましとられるなどの被害が、毎日のように報道されている。令和4年4月から、成年年齢が18歳に引き下げられ、親権者の同意がなくても、1人で契約を結べるようになったことで、消費者被害の増加も懸念されている。今月公表された、本県の消費生活相談の概要によると、令和5年度に県や市町の消費生活相談窓口に寄せられた相談件数は、約2万6,000件となっている。社会情勢を反映し、インターネット通販に関する相談が全体の3割以上を占める一方、対面の取引である訪問販売や訪問購入についての相談も増加している。また、SNSやインターネット広告に関する相談、投資などの儲け話についての相談が年々増加している。こうした相談について、被害に遭いやすい年齢などに特徴があるのか、また、消費者被害を防止するため、被害の特徴を踏まえて、県としてどのように対応していくのか伺う。
最近の消費者相談の特徴は、インターネット通販が半数を超え、年代別の特徴としては、18歳から20歳代の若者では、副業に関する相談、50歳代を中心とした中高年層では、SNS等をきっかけとした投資に関する相談、60歳代以上では、訪問販売などの相談が多くなっている。県では、消費者被害を未然に防止するため、消費者教育出前講座を実施しており、今年度は、高校生向けに、契約の基礎知識や副業トラブルなどに関する講座を実施するほか、高齢者向けには、インターネット通販などの安全な使い方に特化した講座も行っている。
また、これまで、若者向けに制作してきた啓発動画について、今年度は、消費者教育を受ける機会が少ない中高年層や高齢者向けに、投資トラブルなどに関する動画を制作し、被害の現場となっているSNSの広告として配信していく。
■ 教育分野でのSPACの積極的な活用について
私は、以前、SPACの俳優との懇談の中で、演劇がもたらす効果についてお話を伺った。演劇が潜在能力を引き出す力は、教育の場でも大変注目されており、アメリカの高等教育カリキュラムなどの策定や運営を行っている非営利団体「カレッジボード」が行った調査によれば、演劇を経験した学生は、演劇を経験していない学生に比べて、英語の読解力のスコアが平均で65ポイント、数学のスコアが平均で34ポイントも高かったという結果が出ている。また鑑賞だけでなく、ワークショップを体験することは、協調性、集中力、社会性、コミュニケーション力などのトレーニングにも通じ、コミュニケーションに悩む生徒にとっても良い影響をもたらすと聞いている。劇団SPACは、静岡県が世界に誇る高い芸術性を持つ文化財産であり、そのような素晴らしい芸術活動のスキルを有する俳優から、子供たちが直接、演劇やダンスなどを学び、芸術のプロの生きた技やエネルギーに触れ体感することで、本県におけるSPACの価値はますます上がり、子供たちの情操教育に大きく寄与するものと思われる。今後も、SPACの教育分野での積極的な活用を進め、子供たちの情操教育や表現の幅を広げることに貢献して欲しいと考えている。そこで、県として、学校教育と連携し、教育分野で県立劇団SPACをどのように活用していこうと考えているのか伺う。
本県では、これまでもSPACを活用し、長年にわたって、演劇を教育活動に生かしてきた。具体的には、子供たちに鑑賞の機会を提供するため、平成21年度から県内中高生を対象に、15年間で20万人以上の生徒を静岡芸術劇場を中心に招き、昨年度からは、沼津市、浜松市の文化施設に出向いて公演を行うなど、東部や西部への展開にも力を入れている。また、子供たちにとって身近な場所で演劇に触れ、体験する機会を提供するため、SPACの俳優などが学校に出向き、演劇やダンスを教える取組を令和元年度から実施している。これまでに、延べ88校、7,000人以上の子供たちが参加し、最近では、特別支援学校等での、障害や言葉の壁を越えて演劇を体験する取組も進めている。
さらに、演劇等で世界レベルの活躍を目指す意欲のある高校生等を対象にした「SPAC演劇アカデミー」の開催や、今年度、新たに県立清水南高校芸術科に県内初の「演劇専攻」を設置するなど、本格的な演劇人材の育成にも努めていく。
■ 過疎地域における教育の取組について
人口流出や少子化により、過疎地域の教育に関しては、教育の質の確保など様々な課題が生じている中、地域が一体となった取組の一つに、山村留学があるのはご存じか。長野県を舞台に始まった自然体験プログラムで47年の歴史がある。子供たちが現地でホームステイするこの取組が、留学生だけでなく、地域の子供たちの教育においても大変有用性があり、静岡県にこの取組がないことを大変もったいないと感じるとともに、首都圏発の留学生が多いことを鑑みれば、首都圏に至近の静岡県に留学先があれば留学先を探す方も安心と考えるようになった。この制度は、留学生の自然体験機会はもとより、受入地域においては、学校の存続や複式学級の回避、子供たちの交流機会など、過疎地域の教育機会の安定にもつながっている。静岡県内に目を向けると、掛川市倉真では山村留学導入の取組が始まり、現在2組の家族が親子留学をしている。また川根本町では町の教育委員会が主体となり、今年度から2組の家族が山村留学を始めた。こうした、地域と学校さらに自治体が一体となった取組を進めることは、その地域の教育機会の安定など、教育の活性化につながり、次代を担う子供たちの可能性を広げる一助となる。そこで、県として、過疎地域における教育の取組について、考えを伺う。
県内のどの地域であっても子供たちに教育を受ける機会を保障することは、公教育の重要な役割であり、特に過疎地域では、児童生徒数の減少により、教育活動が制限されるおそれがあり、多様な学びの機会を確保するための対策が必要。市町においては、小規模特認校制度により学区を越えて児童生徒の通学を可能としたり、義務教育学校への移行により小中学校間の人的交流を行うなど、地域の実情に応じた取組を行っている。県では、このような市町の取組を尊重しつつ、加配教員を配置することにより、その取組を支援しているが、過疎地の学校が更なる教育活動の充実を図るためには、行政や地域住民といった外部の力がより一層必要である。今後は、ICTを活用した学習や学校間の連携、地域と一体となった魅力ある学校づくりなど、山村留学も含めた好事例について、全国の状況も情報収集しながら、ホームページの活用等により、参考となる情報を市町に向けて広く発信していく。
■ 大規模災害発生時の緊急交通路の確保について
近年は、大規模な災害を伴う地震が多く発生しており、平成23年には東日本大震災が。また直近では、本年1月1日に発生した能登半島地震が記憶に新しい。とりわけ、能登半島地震は、内陸部で発生する地震としては国内でも希な規模であったとされており、奥能登地方を中心に交通網が寸断され、自衛隊をはじめとする救助活動も難航するなど、甚大な被害を生じさせた。一方、本県の状況は、南海トラフ地震や富士山噴火、その他災害により甚大な被害が想定されており、こうした大規模災害への備えは極めて喫緊かつ重要な課題であると考える。特に、発災直後の道路の交通対策は、警察や関係機関等の各種活動を支える根幹をなしていると言え、いち早く、被災た地域内や被災地域につながる道路の損壊状況を把握するなど、県警察と道路管理者との連携が求められる。県警察では、実際に大規模災害が発生した場合の道路の交通対策として、人命救助や緊急的な物資の輸送のために必要な車両の通行を確保するため、一般車両の通行を規制する「緊急交通路」として主要な道路を指定する予定があると伺っている。災害発生時の交通規制については、一刻も早く現場から避難したいという車などで現場が混乱するおそれがあり、その道路を利用する県民にとって大きな影響を与える。また緊急交通路の設定の予定や場所をよく知らない県民もいると思われることから、常日頃から、目に留まる形での周知が非常に重要であると考えている。
そこで、災害発生時の緊急交通路の確保について、交通規制の概要とその周知方策について今後どのように取り組んでいくのか伺う。
交通規制の概要については、大規模災害発生時には、災害応急対策を行う緊急通行車両等の通行を確保するため、災害対策基本法等に基づき、緊急交通路を指定し、一般車両の通行を禁止又は制限する交通規制を実施する。緊急交通路は、東名・新東名高速道路や国道一号等の幹線道路を想定しており、具体的には、交通検問所を設置して、緊急通行車両等以外の車両の通行を禁止又は制限する、交通情報板やテレビ、ラジオ等により広報し、交通総量を抑制する、道路管理者と連携して迂回措置を的確に行う、など緊急交通路の確実な確保を図る。また、緊急交通路の指定に当たっては、道路管理者と連携して道路の確認を行い、通行可能区間を把握した上、警察庁・関係都県警察・道路管理者等の関係機関と調整し決定していく。
周知方策については、事前広報として県警ホームページに、緊急交通路指定予定路線の一覧表と地図を掲載しているほか、静岡県地域防災計画に、区域又は道路の区間を指定して緊急交通路を確保する旨を明記するなど、県民に周知を図っている。また、大規模災害が発生した場合には、指定した緊急交通路について、交通情報板やテレビ、ラジオ、SNS等により幅広く広報し、交通総量を抑制することを予定している。
■ 自転車利用者の交通ルールの遵守について
自転車は、幼児から高齢者まで、幅広い年代が誰でも気軽に乗ることができる便利な乗り物であり、子どもにとってはバランス感覚や速度感覚を養うほか、行動範囲も広がり自立心も育む。また脱炭素の観点からも環境にやさしい移動手段である。その一方で歩行者や自動車などの立場から見ると交通ルールやマナーを無視した運転が散見され、自転車のルールへの認識が足りないことが大きな要因ではないかと考える。アンケート調査では「交通ルールーをよく知らない」と回答した方の割合が4割以上を占めており、自転車の交通ルール周知の必要性が伺える。自転車の運転にあたっては、加害者にも被害者にもならないよう自転車は車両であることを再認識し、すべての自転車利用者の交通ルールの遵守の徹底が求められる。また先ごろ国レベルでも自転車の悪質な交通違反や事故が問題視され、自転車の交通違反に対する反則制度「青切符の導入」を柱とする道路交通法の一部を改正する法律が成立し、身近な交通手段である自転車対策の大きな転換点になるなど、自転車のルール遵守に係る社会の関心は高まっている。また散見される自転車のルール違反の中には、本人自身がルール違反であることを全く認識していないと思われるケースもある。このため警察には「自転車安全利用五則」をはじめとした交通ルールが十分に浸透していない現状を踏まえ、自転車の交通違反に対する指導、取り締まりを積極的に行なっていただきたい。とりわけ、中高生、高齢者、壮年層が関係する自転車の交通違反に対する指導の実施状況と、「自転車安全利用五則」の遵守のために県警察として今後どのように取り組んでいくのか伺う。
本年5月末現在の警察官・交通安全指導員による街頭における自転車安全指導カードを活用した指導警告件数は約2万件で、年代別の内訳は、中学生約2,200件、高校生約9,900件、高齢者約1,200件、それ以外の年代約6,400件であり、違反内容は、一時不停止、並進走行、右側通行の順に多く、全体の約8割を占めている。
県警察では、通勤・通学時間帯を中心に自転車指導取締りを推進するとともに、その状況を公式SNSに毎日投稿することにより、広く県民にルール遵守の重要性を呼び掛けており、また、ヘルメット着用に関する広報啓発活動や参加・体験・実践型の交通安全教育等について、関係機関・団体や高校生自転車マナーアップモデル校等と連携しながら実施している。