定例会一般質問レポート

令和5年12月定例会(12月8日)

■挨拶
本日最後の質問者であります、静岡市葵区選出の天野多美子でございます。
議員になって初めての一般質問ということで、質問に先立ちまして、一言御挨拶申し上げます。
私は、ついこの間まで民間企業の一社員であり、政治経験はありませんでした。しかし、県民として活動をし、女性として、また子育て世代の母親として、子育てや教育に思いを持って、この春の選挙に立候補いたしました。ドン・キホーテさながらの挑戦にもかかわらず、私を信じて応援してくださった友人たち、静岡県議会議員という重責を担わせていただくことになったこと、また今日、こうしてこの壇上に立たせてくださった全ての皆様に、心より感謝を申し上げます。
今の子供たちが社会の中心となる次世代の静岡県のために、私は勇気を持って取り組んでまいる所存でございますので、どうぞ御指導くださいますようお願い申し上げます。
それでは、私は自民改革会議の所属議員として通告に従い、知事、副知事、関係部局長に、当面する県政の諸課題について、一括質問方式にて伺います。

■ 人口減少対策と教育移住

総務省が今年の7月に発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、静岡県の人口は3,633,773人と、前年から25,000人近く減少いたしました。減少数は全都道府県で3番目に多く、特に静岡市の人口減少や伊豆地域の過疎化などが影響したものであります。
これまで県では、首都圏などからの移住促進や企業誘致による雇用創出などの方法で、人口減少の食い止めを図っておりますが、依然として若者の県外への転出超過が目指し、その取組は、まさに道半ば<といったところではないでしょうか。 一方、ふるさと回帰支援センターが発表する移住希望地ランキングでは3年連続で1位となるなど、全国的に見れば本県への注目は高まっており、実際、昨年度の移住者数は過去最高の2,634人となっております。これは、本県に関心を持っている人が多いということの表れであり、静岡県の魅力が注目されている今だからこそ、特に若者や子育て世代にアプローチをする取組を強化することが必要ではないかと考えます。
本県では、高校卒業後、多くの学生が首都圏に進学しており、就職もそのまま首都圏となることが多いのが現状です。しかし一方で、コロナ禍から生まれたワーケーションやテレワークなど、新しい働き方や生き方が広く普及し、同時に地方の新たな魅力がクローズアップされています。このような流れから、県外に対して様々なメニューによるアピールをし、本県への流入人口の拡大にもつなげていくチャンスと捉えております。
さて、近年、特に子育て世代や若者をターゲットに絞った関係人口の取組が、他の都道府県で積極的に展開されているのは御存じでしょうか。全国では第二のふるさとをキーワードに、若者や子育て世代の心に刺さる挑戦をしている地域があります。
例えば、地域みらい留学による高校生の留学移住制度、未就学児を対象とした保育園留学制度、小中学生の親子や児童を対象とした山村留学制度、国境の生命線として離島を守るために国土交通省が推進している離島留学制度など、多岐にわたって親子や子供を対象とした国内留学制度が推進されております。
また、徳島県や秋田県で運用されているデュアルスクールという制度を御紹介しますと、もともと厚生労働省がDVやいじめ被害などでセーフティーネットとして定めた、二拠点で就学できるという制度ですが、これを拡大解釈し、新しいライフスタイルにつなげているものです。この仕組みでは、子供は学校を転校せずに現地の学校に出席することで、自分の地元の学校の出席として認められます。また、大人にはリモートワークができるよう環境を整備して、親子での短期移住を実現しています。そしてこれらの施策によってメディアの注目を集めたり、質の高い関係人口や、また親の介護などのために子連れ帰省にも役立っており、さらにその先の移住などにもつながっているなど、効果も現れ始めているとのことです。
これら国内留学制度のターゲットとなる年齢層や家族は、いずれも子育て世代であり、参加する子供たちも、子供の頃にその地域と深いつながりを持つことで、第二のふるさとを持つことができ、未来の関係人口として成長していきます。
そこで、他県の事例も参考としながら、将来的な移住のきっかけとなるような関係人口の拡大も含め、県外の若者や子育て世代を対象とした人口減少対策の取組を実施していくべきと思いますが、県のこれまでの取組と今後の政策展開について伺います。

→答弁(川勝知事)
人口減少は、社会経済活動やコミュニティの衰退など、地域社会に様々な問題を引き起こすことから、その解決は本県にとって極めて重要な課題であります。
本県への移住者は、先ほど御紹介がございましたが、2020年に1,300人余り、2021年に1,900人余り、2022年には2,600人余りと過去最高を更新しており、それぞれ5人に4人以上が、つまり80%以上が30代前後の子育て世代であります。それゆえ、若者はもとより子育て世代を本県に呼び込み、将来の地域の担い手となっていただくことはとても重要であります。
このため、これまでに小中学生を対象にした教育旅行の誘致や、県外高校生を受け入れる川根高校での留学制度、農泊や棚田体験などを通じて、県外の若者や子育て世代に本県の魅力を伝えてまいりました。
天野議員におかれましては、お子様お2人を離島留学に出されて、子供たちが元気になったという御経験を踏まえ、静岡県内にも山村、里山、あるいは里海が豊かにあると、従って、静岡県下でも東京都ほかで行きづらくなっている子供たちの留学を支えることができるのではないかということで、民間人として活動されていたことはよく存じ上げておりまして、私もその活動はとても静岡県にとっても重要であるというふうに思っておりまして、これからも県議会の議員としてお進めいただければというふうに思うところであります。
さらに、令和3年度からは、関係人口の創出モデルをつくることを目的として、県外の若者、親子を招きまして、地域の自然や文化を体験する里山留学や大学生によるフィールドワークなど、取組を重ねてまいりました。その結果、約600人の関係人口を創出することができました。今後は取組の結果をモデルとして整理した上で横展開し、関係人口のさらなる拡大につなげてまいります。
加えて、これまで関係をつくってきた若者や子育て世代に、本県に移り住んでもらうとともに、県内から流出した若者にも戻ってきてもらって、定住人口の増加につなげることも重要です。そのためには、若者の就業先の確保や、子育てと両立できる働き方の拡大などが必要であります。
こうした考えの下、集中的な施策の検討と早期の実施を政策推進担当部長に指示いたしました。その結果、本年度から新たな取組を開始しているところであります。
具体的に申し上げますと、若者に人気のあるICTやデザイン等のサービス産業の誘致や、子育てと両立できる働き方として、インターネットで仕事を受注できるクラウドワークサービスの普及に取り組んでいるところです。
県といたしましては、御紹介いただきました他県の事例も参考としつつ、地域づくり団体や市町とも協力しながら、本県が若者や子育て世代に選ばれる地域となるように、富国有徳の美しいふじのくにづくりに全力で取り組んでまいります。

■ NPOの担い手確保

平成10年に特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法が施行されてから25年が経過しました。この法律の施行により、市民自らが考え、社会の課題解決に向けて行動する環境がつくられてきました。県内でも、県民が安心し、生き生きと暮らせる地域社会のために必要不可欠な存在として、多くのNPO法人や地域活動団体が立ち上がっています。
NPOは、立場や時間に縛られず、柔軟に社会貢献が可能であることがその特色の一つであり、様々な人が様々な形で活動の担い手として関わることができる場であると思います。私自身も、小中学生向けの自然体験と、山間地の活性化や過疎地域の子供たちの交流機会につながる山村留学という制度が、静岡県内ではほとんど普及していなかったことから、当時仕事をする傍ら、その魅力や認知度を上げる活動や、自治体への提案や推進に取り組んでまいりました。また、こうした活動を通じて、地域活性化に関わる様々なNPOなどと交流してきましたが、多くのNPOではせっかく始めた活動の継続について、担い手不足が大きな課題となっているとのことでした。
しかし一方で、子育て中であっても、いろんな活動のスタッフやボランティアとして、持ち前の個性を生かしたり、暮らしの中で感じた課題に取り組むための活動などで、育児と両立しながら活躍している女性に多く出会います。全国的に見ると、NPOでは、女性の代表は何と全体の30%です。ちなみに地縁組織の自治会長では女性は7%、企業の部長相当職でもまだ10%以下であることを鑑みると、NPOでの女性の割合は大きな割合を占めていると言ってよいのではないでしょうか。
企業活動に比べ柔軟な運営ができるNPO活動は、根本的には生活者の目線が生かされやすいため、特に女性が中心的な担い手となりやすいこと、さらにその活動が自信につながるきっかけとなり、多くの女性の活躍の促進につながっています。
新時代を迎え、営利を生み出す企業活動と生活の中の課題に取り組むNPO活動は、いずれも社会の両輪として欠かせない存在であります。その意味でも、NPO活動がこれからも安定的に活動を継続していく必要があります。
そこでお尋ねします。このような現状を踏まえ、県では、NPO活動の担い手不足に対し、今後どのような対策を講じていくのか、お伺いします。

→答弁(森副知事)
県内のNPOからは、地域活動を担う人材の後継者の不足に悩む声が多く聞かれます。NPOにとって、担い手の確保は大きな課題となっております。
県では、「ふじのくにNPO活動支援センター」を通じ、NPOから寄せられる人材確保に係る相談に対し、必要とされる人材の紹介を行うなどの対応に加え、NPOが募集するボランティアに関する情報を県ホームページやSNSで発信するなど、NPOで活動する人材の確保に努めております。
また、近年、企業において、従業員の社会貢献活動を促進する動きがあることから、昨年度、従業員をNPO活動に参加させたい企業と人材を受け入れたいNPOとのマッチングを新たに行い、NPOの担い手確保に取り組んだところです。その結果、NPOが行う放置竹林対策に企業の従業員が参加したり、高齢者向けの健康講座に企業から講師が派遣されるなど、成果が生まれております。今後は、こうした企業内人材のNPO活動への参画を進めるとともに、地域活動に関心がある移住者とNPOとのマッチングなども実施し、NPOの人材確保を進めてまいります。
議員御指摘のとおり、NPOにおいては、女性が代表者や役員を務める事例が多く見られます。このため、NPOの女性リーダーと子育て支援や環境保全などに関心を持つ女性が交流する機会を設けるなど、女性のNPO活動への参画や活躍の促進につながる取組も併せて検討してまいります。
県といたしましては、多様な人材のNPO活動への参画を促進し、NPOが地域活動を継続して行えるよう取り組んでまいります。以上であります。

■ 過疎地域の交通手段

中山間地や過疎地域では、路線バスの減便や廃止が進み、ますますその生活は窮するところとなっております。特に生活や通院のために運転免許を返納できない高齢者や、バス停までもが遠いため、親がバス停まで送り迎えをするバス通学の子供の話も珍しくありません。また、移動の手段が地域にないことによって住民の不安は一層募り、過疎化はますます進んでいます。
一方で、平成18年には道路運送法が改正され、公共交通機関における移動が困難な過疎地域においては、国土交通省から登録を受けたNPO法人や社会福祉法人などが、白ナンバーで有償サービスを提供できる交通空白地自家用有償旅客運送が制度化されました。さらに現在、政府の規制改革推進会議において、自家用車による有償旅客運送、いわゆるライドシェアの解禁に向けた議論が盛んに行われております。
このライドシェアは、海外では普及が進んでおりますが、日本ではまだまだ認知されておらず、民間調査会社が発表したアンケートの実施結果でも、反対する意見が約6割でありました。しかし、回答者を実際に海外で利用したことがある人に限定すると、賛成は8割以上と高い評価であったそうです。静岡県内では、有償旅客運送の試みがほとんど聞こえてきませんが、いずれの形であっても、今後、過疎地域における交通手段の確保につなげていくことが重要であると考えます。
市町が基礎的自治体として住民の足の確保を担い、国が法制度による安全の確保のための規制などを担う中、県は広域的な自治体として、中山間地や過疎地域における交通手段の確保にどのように取り組んでいくのか伺います。

→答弁(勝又交通基盤部長)
中山間地や過疎地域において、今後も住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるようにするためには、誰もが利用しやすい交通手段を確保していくことが極めて重要であります。
近年、路線バスの廃止が進む中で、代わりとなるバスを市町が運行しております。県では、昨年度、中山間地等を含む29市町の227系統に補助を行いましたが、交通手段の確保は十分とは言えない状況であります。
こうした中、近年、議員御指摘の自家用有償旅客運送を含む、地域住民が主体となった住民共助による移動手段の確保の取組が行われてきております。この取組が課題解決の一つの方法になり得ると考え、事業が継続している県内外の先行事例について、現地調査を行ってまいりました。その結果、住民ニーズに配慮した経路等の設定に加え、担い手となる中心的人材の確保が重要であることを認識いたしました。そこで、勉強会を通じて市町に情報共有したところであり、今後、導入に向けた地域ごとの条件や課題を整理し、行政の支援の在り方を検討してまいります。
県といたしましては、制度改正等の動向を見極め、地域の実情に応じた、暮らしを支える交通手段の確保に向け、引き続き市町の関係者と連携し、取り組んでまいります。

■ オクシズの優良農地の確保

オクシズとは、静岡市の8割を占める自然豊かな中山間地域です。ここでは、お茶やわさびなどを代表する多様な農産物が生産されております。特に「本山茶」は本場の山のお茶として命名されたブランド茶で、約800年前に安倍川上流の足久保から始まったとされております。また、400年前に栽培が始まったとされるわさびは、オクシズの清らかな水が湧く有東木がその栽培の発祥の地であり、平成29年に日本農業遺産、さらに平成30年には世界農業遺産に認定されました。自然への負荷が少ないわさび田は周辺に豊かな自然環境を育み、また美しい景観を生み出すとともに、水辺を好む動植物の多様性に富んだ生態系を作り出しています。
こうして魅力ある静岡ブランドの農産物は、全国的にも、また自然を守る意味でも価値がありますが、静岡市内の全農地、約4,500ヘクタールのうち約6割がオクシズにあり、その地形は傾斜が険しく利用しにくい農地であることから、営農条件としては不利であり、また、農家の高齢化や後継者不足などにより、農業の継続が困難となり、これらの状況が相まって、耕作放棄地のますますの増加が懸念されております。
一方で、地域の農業を守りたい、新規就農で農家になりたいとの要望は少なからずあると聞きます。こうした営農意欲が高い後継者が農家となり、持続的に農業を継続していくためには、安心安全に営農できるような生産性の高い優良な農地を確保する基盤整備が必要であると考えます。
そこで、オクシズの地域特性に応じた優良農地の確保について、県の取組を伺います。

→答弁(櫻井農林水産担当部長)
急傾斜で点在する農地が多く、担い手の高齢化や後継者不足が急速に進行するオクシズ地域において、本県を代表する本山茶や水わさびの産地が持続的に発展するためには、地域特性に応じた基盤整備を効果的に進め、生産性の高い優良農地を確保することが重要であります。
このため、県では、GISを活用して茶園の形状や傾斜度、耕作状況等を分析し、事業効果の高い22ヘクタールを対象に策定した基盤整備の全体構想に基づき、令和4年度から順次、農地中間管理機構と連携した事業化を進めております。今後は、事業効果が早期に発現できるよう、工事施工から苗木の植栽までが1年で完了する即効性の高い区画整理等を重点的に進め、意欲ある担い手が、農地の集積・集約化や有機茶への転換など、産地競争力の高い茶業経営を迅速に展開できるよう支援を強化してまいります。
また、水わさびにつきましては、生産者からの要望を踏まえ、山間部のわさび田を農道に近接する傾斜の緩やかな農地に移転し、災害リスクを軽減する新たな取組を進めております。令和6年度からは先行モデルとして、60アールの荒廃農地等を対象に、わさび田に転換する基盤整備に着手してまいります。
県といたしましては、オクシズ地域を支える農業の持続的発展に向け、地域特性を生かした基盤整備を着実に推進し、生産性や安全性の高い優良農地の確保に全力で取り組んでまいります。以上であります。

■ 麻機遊水池の整備の進め方

私の地元の静岡市麻機地区に始まり清水港に注ぐ巴川は、昔から静岡市民の暮らしの中心に流れる重要な二級河川であります。御存じのとおり、勾配がとても緩やかであるため、必然的に水はけが悪く、一たび豪雨が発生すれば、周辺地域における氾濫や、それに伴う浸水被害がしばしば発生する河川であります。
そのような状況であるため、昭和49年の七夕豪雨を契機に、平成11年には静岡県が大谷川放水路を構築するなど、懸命な治水対策が行われてまいりました。しかしその後も、特にここ近年は甚大な豪雨災害が頻発しており、流域住民にとって、巴川の治水対策は生活に直結する重要な課題であります。
巴川流域では、巴川流域水害対策計画に基づき、巴川本川の河道掘削や麻機遊水地の211工区51ヘクタールの整備に加え、校庭や公園などを活用した雨水貯留施設120か所の設置などを進めていると聞いております。特に麻機遊水地の整備については、観山中学に隣接するエリアの整備に高い関心が寄せられています。巴川の治水は生活に直結する重要な課題であるため、地域住民にしっかりとこの治水対策について理解してもらい、住民の声も考慮しながら進めていくことが重要であると考えます。
そこで、巴川流域における麻機遊水地の整備について、今後どのように進めていくのか、県の所見を伺います。

→答弁(勝又交通基盤部長)
市街地を流れる巴川の治水対策は、昭和49年の七夕豪雨を契機に、本川改修や大谷川放水路の建設、麻機遊水地の整備を柱として、静岡市とともに総合治水対策事業として、重点的かつ段階的に治水安全度の向上を図っているところであります。このうち、麻機遊水地の整備については、将来計画200ヘクタールに対して、これまでに138ヘクタールの整備が完了し、昨年9月の台風15号に伴う豪雨の際には、東京ドーム約2杯分に相当する2,640,000立方メートルの洪水をため、下流域の浸水被害軽減に一定の効果を発現しました。現在施工中の211工区を令和7年には供用開始させ、さらなる安全度の向上を図ってまいります。
麻機遊水地の今後の整備については、気候変動による豪雨の激甚化、頻発化や現在の施設の効果検証を踏まえ、関係機関や流域住民の御意見を伺い、御理解を得ながら、新たに河川整備計画に位置づける検討を進めてまいります。
県といたしましては、来年は七夕豪雨から50年となる節目であることから、これまでの治水対策の効果や現状についての一層の効果にも努めながら、水災害に強い地域づくりを推進してまいります。以上であります。

■ 養育費は子供の権利

この問題については、私自身、自戒の意を込めて、質問と要望を申し上げます。
まず静岡県では、子供が権利の主体であり、子供の最善の利益を実現するために、社会全体で子供を育むことを基本理念として掲げており
・子供の権利擁護
・子供が安全に暮らすための取組
・家庭と同様の環境における養育
・子供の自立支援
4つの施策を柱としております。また、静岡県の人権施策推進計画においても、子供をめぐる人権問題に触れております。中でも子供の貧困は、親の貧困とも直結してくる問題であり、とりわけひとり親家庭の貧困は深刻な問題となっています。
その大きな理由の一つとして養育費があります。令和3年度に実施した全国の独り親世帯の調査によると、養育費の支払率は28・1%と、先進国では例がないほどの低い水準にとどまっています。それはきちんと取り決めを交わして離婚できるケースばかりではなかったり、DVやモラハラなどで協議する機会すら持たないケースも大変多く、また養育費について、まるで別れた相手を養うとか、甘えているというような感覚を持ち、親同士でのやり取りが終わるケースもあります。
しかし、養育費を払わないというのはもってのほかですが、養育する側も受け取らないのは子供の権利を放棄侵害していることを認識するべきです。これは冒頭申し上げたとおり、私自身がまさに養育費を受け取れなかった親であり、あのとき私がもっとしっかりしていればと、我が子たちに対し申し訳なく思っているからこそ、実体験からの要望でもあります。
今、静岡県の婚姻件数に対する離婚件数の割合は、令和4年度で37・8%、その中で子供がいるケースは約6割を占めています。また、昨年度に発表された国の調査によれば、母子世帯における令和3年度の平均就労年収は2,360,000円であり、これは父子世帯の4,960,000円を大きく下回っています。これには、離婚前の就労状況が大きく影響しています。男性は離婚前も100%近くの方が就労していますが、母子世帯の場合、女性の就労状況はパートを含めても75%前後であり、4人に1人は専業主婦、働いていたとしてもパートや時短勤務など、キャリアが積まれにくいことなどが影響していると思われます。
これは、これまでの社会が家事や育児は母親の役目というバイアスがあり、社会の構造も、男性が外で働き、女性が家庭を守るという仕組みになっていました。特に、乳幼児の子育ては母親がするのが自然の流れであることから、この就労状況や離婚後の就労収入の男女差については必然とも言えるところでしょう。
女性にとって、出産は人生の大きな決断であります。自分の身を挺し、命を授かり我が子を育む喜びは無上のものであります。しかし同時に、子育ての中心を担うのは女性であることはまだまだ多く、よって肉体的にも環境的にも大きな変化と負担を持つのは女性であります。
さて、誰しも、将来の結婚や未来の家庭像について思いをはせるとき、希望や幸せな姿を思い描きます。しかし、万が一離婚したら養育費は払われないのが当たり前という世の中であったら、特に女性はまず自分を守るために仕事を続け、収入を確保すること、また、場合によっては子供を産まない選択がよぎってしまうことも、想像に難くないのではないでしょうか。養育費だけで独り親の貧困が解決するものではありませんが、ただでさえ低い女性の独り親の収入だけで子育てをするのは、子供にとってもハンデになります。子供の養育費に係る義務については、両方の親がしっかり認識するべきであり、その認識不足が今日の独り親の貧困を招く一因になっていることは否めません。
かつて離婚は当人同士の問題でした。しかし、今や独り親の貧困は大きな社会課題です。親の経済力によって、生活環境や学歴など、子供たちの未来は大きく左右されます。それはまた、日本の未来をも大きく左右するものであります。未来を担う子供たちのためにも、行政の御指導やサポートをお願いしたい思いです。
例えば、離婚届を提出する際、窓口での声かけや冊子の配布をするなどの情報提供、また行政の相談サービスだけでなく、離婚問題に強い弁護士の紹介や相談会の開催などを強く促すことが必要と思われます。
これらについて、市町や関係団体等と連携した取組を進めていく必要があるかと思いますが、県の所見を伺います。以上、答弁を求めます。

→答弁(八木健康福祉部長)
養育費については、子供の健やかな成長のために必要な費用であり、養育費の確保に係る支援を市町や関係団体と連携して取り組むことが必要であると考えております。
養育費の確保に当たっては、離婚前の対応が特に重要であることから、県では、国の養育費等相談支援センターから講師を招き、市町の戸籍担当と独り親支援担当を対象に研修会を開催し、市町で離婚届を受け付ける際、独り親をサポートする情報の提供に加え、養育費の取り決めを確認するよう働きかけております。また、離婚後を含む養育費に関する相談支援につきましては、「静岡県ひとり親あんしんLINE」や、市町の独り親相談窓口での対応のほか、独り親サポートセンターにおいて、離婚や養育費等の知識を有する相談員を配置し、電話や来所による相談支援を実施しております。
加えて、養育費確保のための取り決めや支払いの履行などの法律問題に対応するため、弁護士による県内4か所での無料法律相談会を毎月実施するほか、市町と連携して県内9か所の市役所等での出張無料相談を実施するなど、身近な地域での相談支援の充実に取り組んでおります。
県といたしましては、引き続き、市町や関係団体と連携して、養育費の確保の支援に努め、離婚した独り親家庭の生活の安定と、その子供が健やかに成長できる社会の実現を目指してまいります。以上であります。

○副議長(鈴木澄美君) 天野多美子君。
(8番 天野多美子君登壇)
○8番(天野多美子君) それぞれに御答弁いただきましてありがとうございました。
それでは、要望を2点申し上げます。
まず、NPOの活動についてですが、担い手不足についてなんですけれども、こうした活動については、利益や収入につながりにくいという側面がありまして、いわゆるやりがいの搾取であったり、利益の出し方が難しいケースがあって、なかなか担い手につながらないという側面もあります。そういったことからも、所得や利益につなげる経営アドバイスなども教育する機会があれば、効率的に運営につなげられるのではないかと考えますので、どうぞよろしくお願いいたします。
若者や子育て世代をターゲットとした人口減少対策について、すみません、人口減少対策について要望を申し上げます。
先ほどお話の中で知事から、移住者に関して1,300人、1,900人、そして2,600人と、段階的に増えているということでお伺いしまして、大変うれしい気持ちになりました。しかしながらですね、他県に比べて非常にこの静岡県というのはアドバンテージがある中、私も山村留学の活動を通じて、ほかにももっとできることがいっぱいあるんじゃないかと、私はあくまでも教育の立場からですけれども、先ほどのお話の中のICTや子育てと両立しての就労の移住というお話だったんですけれども、もちろんそういうのも大事ですけれども、教育の面も含めてですね、もっと幅広くできることがあるんじゃないかと思います。広い範囲の中で、また御検討いただければ大変ありがたいと思います。
以上、質問を終わります。

○副議長(鈴木澄美君) これで、天野多美子くんの質問は終わりました。